その朝、胸の奥がざわざわして、どうしても落ち着かない気持ちのまま家を出た。
向かった先は都内のペットショップ。
あの頃、日課のようになっていたブリーダー情報サイトやペットショップのウェブサイト、保護犬情報をGoogle検索していて、ペットショップのページでお迎えキャンペーン実施中というバナーを見つけた。
ネットサーフィン中なので、流れでポチってみると”今ならこちらのお値段でお迎えできます!”と赤いお値段が表示されていた。”半額でお迎えできます!”なんていうのもあって、売り込みに熱を感じた。
流石に何十万も出せる余裕は無かったので、そういう表示に目が止まった。
どの子もみんな可愛いな🩷って思いながら絞り込み検索をしてみた。
その当時、トイプードルの検索をよくしていた。賢いところや、人懐こくて初心者向きというアピールポイントに惹かれて、毛の色や性別で選抜候補を探していた。
黒い女の子かわいい🩷この子はレアな毛色なのかぁ🧡なんて思いながら。
話は戻るけど、お迎えキャンペーンではこう言っては悪いかもしれないけど、とてもお買い得な感じがした。
更にページを閲覧していると、少し大きくなったので安くなりました!というコーナーを発見した。
犬の成長は早いって聞くし、もう大人なんだろうか。
ポチってみると、格安なお値段でお迎えできるというそのワンコ達はとても可愛い子ばかりだった。
今まで接種したワクチン代などを払っても、手の届く金額だった。
健康状態も良いみたいだし、とくに悪いところなんて見当たらない…
検索条件を誕生日の早い子順で絞ると、レッドの女の子が現れた。
この子が後に私の元にやってくるメープルちゃんでした。
画面越しに見つけた小さなトイプードル…どうしても、この目で会いたかった。
お店に到着したのは予定より30分程早かったので、お店の前を行ったり来たりしてしまい、時間が近くなり店の扉を開けた瞬間、あの子だってすぐ分かった。不思議なくらい迷わなかった。
ガラスケースの中で元気いっぱいに遊ぶレッドのトイプードルを見てすぐに「あぁ、この子だ」と知らせてくれた。
もう1匹の子とおもちゃを引っ張り合い、時々ぺたんと足を広げて伏せる姿は、まるで動くぬいぐるみ。
見ているだけで頬がゆるんで、やっと会えたね。ってそう思えた。
家から遠いショップまで来たのは、ただひとつ。
店舗移動もしてもらえるんだけど、なるべく移動で負担をかけたくなかったから。
会ってからお迎えするか決めたいなんて言っていたけれど、正直なところお店に向かう電車の中でもう答えは出ていた。
「私があの子を迎える」
店員さんが声をかけてくれ、抱っこさせてもらった瞬間、ちいさな体が腕の中でふわっと沈んだ。
温かさと息づかいが伝わってきて、胸の真ん中が静かに震えた。
「大丈夫だよ」
そんなふうに語りかけられた気がして、もう離したくなくなった。
お迎えの予約を済ませてから、必要なものを揃えるため、次は家の近くのショップに連れてきてもらう手配をした。
来週の木曜日にその子は近所の店に来る。
そして金曜日──ついに家族になる。
ガラスの向こうに小さく揺れる尻尾を見ながら、そっとつぶやいた。
「待っててね。またすぐ会いに来るから。」


